はじめに
これまでの自作クーラー製作経験を活かし、このたび改良版の自作クーラーを新たに制作しました。スチロール製クーラーボックスをベースにした自作冷風扇で、より高い冷却性能を引き出すために新しいアイデアや工夫を取り入れています。今回は、この改良版自作クーラーの制作工程と、その冷却性能について詳しくご紹介します。
自作クーラーの基本
保冷剤と扇風機の組み合わせ
自作クーラーの基本構造は驚くほどシンプルで、家庭にある材料で簡単に作れるのが特徴です。その構成要素は主にクーラーボックス、板状保冷剤、そして扇風機の3つ。
クーラーボックスはこのシステムの心臓部であり、その内部に板状保冷剤を設置することで、内部の空気を冷却します。そして、その冷えた空気を部屋へ送り出す役割を担うのが扇風機です。扇風機がクーラーボックス内に外気を取り込み、冷却された空気を室内へ送り出すことで、部屋全体を効率よく冷やす仕組みになっています。
しかし、この設計には一つの課題があります。それは、保冷剤の冷却力に限界があることです。保冷剤は凍らせた直後は十分な冷却力を発揮しますが、時間の経過とともに徐々に温度が上昇し、約3時間程度で冷却性能が著しく低下してしまいます。結果として、自作クーラーは通常の扇風機と同程度の性能に戻ってしまうのです。
この問題を解決するためには、保冷剤を定期的に交換するか、冷却の持続性を高める仕組みを検討する必要があります。それにより、自作クーラーはより実用的で日常的に活用できるデバイスへと進化させることが可能となります。
市販ポータブルクーラーと自作クーラーの比較
市販のポータブルクーラーには「クレクール」「冷え蔵」「TRANSCOOL」「EENOUR ポータブルエアコン」などさまざまな製品があります。これらの市販モデルは小型ながらも高い冷却力を誇り、省エネ性能にも優れており、長時間の使用や移動時の冷却にも適しています。
中でも「Ecoflow Wave」は、ポータブルクーラー市場で大きな注目を集めています。このモデルは冷媒を使用した本格的なポータブルエアコンであり、一般的なポータブルクーラーよりも高い冷却性能を発揮します。家庭用エアコンと同様の冷媒システムにより、効果的に空間を冷やすことができ、使用者の快適性を大幅に向上させます。特に暑い環境下での車中泊などでの使用において、その冷却効率の高さは大きなメリットとなります。
ただし、これら高性能ポータブルクーラーには大きなデメリットもあります。それは価格面でのハードルの高さです。最新モデルや高性能モデルは技術的進歩を反映している分、価格も高額で、多くの消費者にとっては簡単に手を出せるものではありません。そのため、コスト面で自作クーラーや低価格モデルへ目を向ける方も少なくありません。
改良版自作クーラーの製作
エヴァポレーター導入による冷却性能の向上
今回の改良版では、従来の保冷剤に加えて水の気化熱を利用した「エヴァポレーター」を導入し、冷却効率の向上を図りました。エヴァポレーターは水が蒸発する際に熱を奪う仕組みを利用し、空気を効率よく冷却する役割を果たします。

このエヴァポレーターは「TRANSCOOL」を販売しているコイズミダイレクトなどでオプション品として購入可能です。導入により、保冷剤単体に頼る従来の仕組みより持続的で効率的な冷却が可能となり、長時間使用や高温環境下での安定した冷却が可能となりました。
なお、注意点としては水分による湿度上昇があるため、換気など湿度管理を適切に行わないと環境によっては蒸し暑く感じる場合があります。
クーラーボックス探し
エヴァポレーターを組み込むためには、適合サイズのクーラーボックスを用意する必要がありました。各種ホームセンターやECサイトを探し回り、サイズと機能の条件を満たすボックスを見つけるのに予想以上の時間がかかりました。
やっと見つけた適合サイズのクーラーボックス
最終的に2週間ほどかけてモノタロウでエヴァポレーターに適合するクーラーボックスを発見。送風口や給水パーツも併せて購入することができ、改良版自作クーラーの製作が一気に進みました。


USBファンのインストール
クーラーボックスにUSBファンを組み込む作業を実施。このファンは二枚羽が逆回転する仕様で、一方で空気を吸い込みもう一方で排出することで効率的な空気循環を生み出します。音も静かで風量も十分あり、モバイルバッテリーでも駆動可能なため利便性が高いのが魅力です。

当初はシガーソケット給電のよりパワフルなファンの導入を検討しましたが、適合サイズの製品が見つからずUSBファンで対応しましたが、結果的にはこの選択で問題ありませんでした。
ファンの色はピンクでしたが、性能と使いやすさを重視したため、色味については特に気にならず実用性重視の選択となりました。
送風口の設置
送風口はコンパクトな設計ですが、この自作クーラーの目的は車内全体の冷却ではなくスポット的な冷却のため、このサイズで十分対応可能です。

風向調整機構付きのパーツを探しましたが入手できず、場合によっては自動車ディーラー経由での入手を検討するのも一つの方法です。
シンプルながらも効果的なスポット冷却を実現し、必要な箇所へ的確に冷風を届けることが可能です。
水供給システムの構築
クーラーボックス内の水量には限界があるため、外部給水タンクから水を補給する外付け水供給システムを構築しました。これは「TRANSCOOL」の機能を参考に設計しています。

さらに水量調整のため、園芸用パーツ「滴下エンド」を導入し水の流量を調整できるようにすることで、冷却効果と水量の維持を両立できるようにしました。

改良版自作クーラーの完成
完成した改良版自作クーラーは、氷や保冷剤を追加することで内部水温を下げ、気化時の冷却効果をさらに高められます。これにより外部給水と組み合わせることで長時間の使用にも耐えうる安定した冷却環境を実現します。

氷の形状や保冷剤の種類を工夫することで、冷却力や持続時間を調整できる点もポイントです。
性能テストと使用感
改良版自作クーラーのテストでは、気化熱利用による冷風の冷たさをしっかり体感でき、期待以上の効果を得られました。
ただし、使用時には湿度上昇への対策が必要で、窓を閉め切った状態での使用には換気扇設置やカビ防止用にエッセンシャルオイルの活用を推奨します。
まとめ
今回ご紹介した改良版自作クーラーの魅力は何といってもコストパフォーマンスとカスタマイズ性にあります。市販ポータブルクーラーに比べ低コストでありながら、用途や環境に合わせて柔軟にカスタマイズが可能です。
この夏、自分だけの自作クーラーを作り、車中泊や作業場、テント泊などで涼しい空間を手に入れてみませんか?自らの手で作り上げるこの冷却システムが、暑さ対策の新たなパートナーとなり、夏を快適に過ごす強力な味方になってくれるはずです。